利用者の内訳

カウンセリングの利用を検討するとき、特に初めての方だと「自分は行ってもいいのか?」と迷われることも多いと思います。
心身の不調が顕著な場合や、カウンセリングの負担が大きすぎて逆効果になる場合を除き、「カウンセリングに行ってはいけない人」というのはありません。
それでも、どんな人が利用しているのかを知ることで「自分も行ってみようかな」と思えるかも知れません。
これまでに当ルームのカウンセリングを利用された方の性別、年齢、職業などの統計を掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください(2025年3月現在)。

 

1. 性別

同性の担当者を希望して来られる女性の利用者が多くいます。身体の悩みや、女性ならではの社会的役割、社会的抑圧に関する悩みはやはり男性には話しづらいと感じる方が多く、これはごく自然な感覚だと思います。ただし、この割合は他のカウンセリング機関でも大体似たような傾向を示すのではないかと考えます。どちらかというと女性の方が「誰かに相談する」という対処法をとることが多いと言えるでしょう。
一方で、開設当初はほとんど女性ばかりの利用になるだろうと考えていましたが、意外と男性の利用者も多くいます。自分の中で問題を解決するというこれまでの対処法が通用しなくなったとき、誰にも相談できないという孤独感の強さが男性利用者に多い印象です。また、主にパートナーとの関係に悩む男性は、異性の立場からの意見を参考にしたいという動機を持つことも多いようです。過酷なホモソーシャルの中で立ち行かなくなったとき、同性を頼ることができず、むしろ異性によるケアを求めるという点が女性との大きな違いと言えるでしょう。
ジェンダー論の観点から、あまり決めつけるような表現の仕方は適切でないかも知れませんが、「女性は喪失の痛みや悲しみが激しく、男性は喪失への恐怖や孤独感が深い」という印象を持っています。

 

2. 年齢

20代~30代はカウンセリングに対する否定的なイメージがあまりなく、実際に来所するまでのハードルはそこまで高くない印象です。メンタルヘルスに関する啓発が浸透しつつあることの証左かもしれません。
40代~50代の方がややハードルが高く、しばらくは自分の力で試行錯誤した上で来所される方が多いようです。

 

3. 職業

半数が会社員ですが、当然ながら職種は様々です。特にどの職種が多い、ということはありませんが、医療・福祉・介護職といった対人援助職の方は、メンタルヘルスに関する基礎知識があり、“悩みを人に相談すること”へのハードルが低いように思われます。
一般企業には相談窓口が設置されるようになってきましたが、専門的で特殊な職種や一人職場では、まだまだ相談窓口が少なく、一人で悩みを抱え込んでしまう傾向があるかも知れません。

 

4. 精神科・心療内科通院状況

半数以上が精神科・心療内科の受診歴はない、これといった症状はないが話を聴いてもらいたいという方です。「受診を検討しているが、その前にとりあえずカウンセリングを受けようと思った」とおっしゃる方もよくいます。
全体的に、精神症状はほとんどないか、あったとしても軽度という方が多いです。カウンセリングはそれなりに負担のかかる作業でもあるため、あまりにも症状が重い場合はカウンセリングよりも受診を勧めています。

 

5. カウンセリング経験

過去にカウンセリングを受けたことはなく全く初めてという方が大半です。カウンセリングは突発的に思い立って申し込むというより、長い期間逡巡し、勇気を出して申し込むというケースの方が多いです。もちろん、困ったとき即座にカウンセリングという選択肢が思い浮かぶのは、心理職として大変喜ばしいことです。
一方で、少しずつではありますが、この調査を始めた頃よりも、過去にカウンセリングを受けた経験があるという方が徐々に増えている印象があります。これもメンタルヘルスに関する知識が徐々に普及しつつあることの表れかも知れません。
ただし、過去にカウンセリングを受けた経験があるといっても、医療機関、学生相談、企業内相談の他、無資格者による民間のカウンセリングルームなどもあり、玉石混淆のようですので、その内容には注意しなければなりません。
当ルームは臨床心理士・公認心理師の有資格者であることを重要視しており、サイトでもそのように強調しています。無資格者によるカウンセリングを受けたことがある方も、どこか不安を感じており、質が担保された有資格者によるカウンセリング機関を検索するというパターンも多い印象です。
SNSの影響か、以前と比べると臨床心理士・公認心理師という資格が一般の方にもよく知られるようになったなと感じます。

 

6. 来談経緯



大半の方が自らインターネットで検索して当ルームを探し当てたという方です。これはカウンセリングに限ったことではなく、自分にとって必要な情報をインターネットで探すというやり方が現代の主流であるため、当然のデータだと思われます。
他には、弊社と契約している企業・団体様を通しての利用や、精神科・心療内科からの紹介、担当者と同業である臨床心理士・公認心理師からの紹介、過去に当ルームを利用してくださった方からの紹介などがあります。

 

7. 終結までの回数

1回のみで終了される方が半数以上です。当所では継続面接を無理に勧めることはしていませんので、「試しに来てみた」という方も多くいらっしゃいます。混乱している気持ちが整理できると多くの方は1回でも満足されますし、初めから1回のみを希望される方もいます。また、そのような方は必要に応じて予約するという利用の仕方をしており、半年、1年ぶりにいらっしゃるという方も多くおられます。
初回で何らかの手応えや可能性を感じたり、もう少し時間をかけて自分のことを探求したいと感じたりした場合は、継続面接に移行します。回数を重ねていくと徐々に自身の課題が明確になり、自分の力だけでやってみようという自信がつき、2回~10回程度で終結を選ぶという方が多いです。
20回、30回と継続される方は、「カウンセリングに行く」という行為が生活の中でパターン化され、心身の健康を維持するためのライフスタイルになっている方が多い印象です。中には数年継続されている方もいます。
継続は必須ではありませんし、長く続ければ良いというわけでもありません。終結までの回数は「何を目指すか」によって変わってきます。どこをゴールとして設定するのかは担当者と話し合って決めます。

 

8. 面接ペース

 

以前はあまり間を空けずに自分を振り返り、内的探求を促すようなカウンセリングを主軸としていたため、週1回もしくは2週に1回の方が大半でした。しかし最近は、あえて病理を掘り起こすよりも、ご本人の持っている力を尊重しながら現実に対処していくこともまた重要であることを再認識し、月1回を積極的に採用するようになりました。
面接ペースも「何を目指すか」「カウンセリングで何をするか」によって変わります。こちらが一方的に決めるのではなく、ご本人の希望や事情を考慮しながら話し合って決めていきます。

 

9. 主訴

グラフは申し込みの段階でご本人が「現在困っていること」として語る相談内容を、かなり大雑把にまとめたものです。しかし、お話を聞いてみると、どれか一つだけということはほとんどなく、多くの場合は複数の事柄が関連しています。例えば「上司との関係に悩んでいる(人間関係)」という人が、その悩みによって不眠や抑うつ気分に苛まれ(症状)、仕事でのミスが頻発している(不適応)といったケースなどがそうです。このようなケースに対し「何を目指すか」「何に取り組むか」を話し合うのが、カウンセリングで最初に行われることです。例えば、上司とのコミュニケーションの仕方について見直すのか、治療の一環として生活リズムを整えるのか、ハラスメントや休職といった会社への具体的な働きかけを行っていくのか、いつも目上の人と似たような関係パターンに陥ってしまう自分の歴史について探索していくのか、といったことです。これはカウンセリングが進展する中で適宜更新されていきます。
人間関係の悩みは一貫して多く、この傾向は今後も変わらないでしょう。人間関係について何の悩みもないという人はほとんどいないと思います。自分にとって重要な相手との関係に悩むこと自体に自分の課題を見つめ直すヒントがあるとも言えるでしょう。