利用者の内訳

カウンセリングを検討するとき、「自分は行ってもいいのか?」と迷われる方もいると思います。
心身の不調が顕著な場合を除き、「カウンセリングに行ってはいけない人」というのはありません。
それでも、どんな人が利用しているのかを知ることで「自分も行ってみようかな」と思えるかも知れません。
これまでに当ルームのカウンセリングを利用された方の性別、年齢、職業などの統計を掲載していますので、ぜひ参考にしてみてください(2024年3月現在)。

 

1. 性別

同性の担当者を希望して来られる女性の利用者が多くいます。身体の悩みや、女性ならではの社会的役割、社会的抑圧に関する悩みはやはり男性には話しづらいと感じる方が多く、これはごく自然な感覚だと思います。ほとんどの女性が、大なり小なり、自覚の有無にかかわらず、男性に対する何らかのトラウマを持っており、同性との連帯によってそのケアを欲していると言えるのではないでしょうか。
一方で、開設当初はほとんど女性ばかりの利用になるだろうと考えていましたが、意外と男性の利用者も多くいます。自分の中で問題を解決するというこれまでの対処法が通用しなくなったとき、誰にも相談できないという孤独感の強さが男性利用者に多い印象です。また、主にパートナーとの関係に悩む男性は、異性の立場からの意見を参考にしたいという動機を持つことも多いようです。過酷なホモソーシャルの中で立ち行かなくなったとき、同性を頼ることができず、むしろ異性によるケアを求めるという点が女性との大きな違いと言えるでしょう。
ジェンダー論の観点から、あまり決めつけるような表現の仕方は適切でないかも知れませんが、「女性は喪失の痛みや悲しみが激しく、男性は喪失への恐怖や孤独感が深い」という印象を持っています。

 

2. 年齢

20代~30代はカウンセリングに対する否定的なイメージがあまりなく、メンタルヘルスに関する啓発が浸透しつつある印象です。
また40代以上になると、社会的適応というよりも、自分の半生をとらえ直すという内面的な課題がテーマになるように思います。何らかのきっかけによって、それまでは当たり前だった価値観を見直さざるを得なくなった、という方も多いようです。

 

3. 職業

様々な職業の方がいらっしゃいます。特にどの職種が多い、ということはありませんが、医療・福祉・介護職といった対人援助職の方は、メンタルヘルスに関する基礎知識があり、“悩みを人に相談すること”へのハードルが低いように思われます。
一般企業には相談窓口が設置されるようになってきましたが、専門的で特殊な職種や一人職場では、まだまだ相談窓口が少なく、一人で悩みを抱え込んでしまう傾向があるかも知れません。

 

4. 精神科・心療内科通院状況

半数以上が精神科・心療内科の受診歴はない、これといった症状はないが話を聴いてもらいたいという方です。一方で、医療機関で薬物療法を受けながらカウンセリングを併用している方も一定数いらっしゃいます。また、過去に受診していたことがあるが現在はしていないという方もいらっしゃいます。
全体的に、症状がほとんどないか、あったとしても軽度という方が多いです。カウンセリングはそれなりに負担のかかる作業でもあるため、あまりにも症状が重い場合はカウンセリングよりも受診を勧めています。

 

5. カウンセリング経験

過去にカウンセリングを受けたことはなく全く初めてという方が大半です。カウンセリングに興味はあるけれど抵抗がある、抵抗があるけれど一人ではどうにもならない…と長い期間逡巡し、勇気を出して申し込んだという方がとても多いです。
一方で、少しずつではありますが、この調査を始めた頃よりも、過去にカウンセリングを受けた経験があるという方が徐々に増えている印象があります。これもメンタルヘルスに関する知識が徐々に普及しつつあることの証左かも知れません。
ただし、過去にカウンセリングを受けた経験があるといっても、医療機関、学生相談、企業内相談の他、無資格者による民間のカウンセリングルームなどもあり、玉石混淆のようですので、その内容には注意しなければなりません。
当ルームは臨床心理士・公認心理師の有資格者であることを重要視しており、サイトでもそのように強調しています。無資格者によるカウンセリングを受けたことがある方も、どこか不安を感じており、質が担保された有資格者によるカウンセリング機関を検索するというパターンも多い印象です。
SNSの影響か、以前と比べると臨床心理士という資格が一般の方にもよく知られるようになったなと感じます。

 

6. 来談経緯



大半の方が自らインターネットで検索して当ルームを探し当てたという方です。これはカウンセリングに限ったことではなく、自分にとって必要な情報をインターネットで探すというやり方が現代の主流であるため、当然のデータだと思われます。
紹介は、弊社と契約している団体様を通しての利用や、精神科・心療内科からの紹介、担当者と同業である臨床心理士・公認心理師からの紹介、過去に当ルームを利用してくださった方からの紹介などが含まれます。

7. 終結までの回数

1回のみで終了される方が半数以上です。当所では継続面接を無理に勧めることはしていませんので、「試しに来てみた」という方も多くいらっしゃいます。混乱している気持ちが整理できると多くの方は1回でも満足されますし、初めから1回のみを希望される方もいます。また、そのような方は必要に応じて予約するという利用の仕方をしており、半年、1年ぶりにいらっしゃるという方も多くおられます。
初回で何らかの手応えや可能性を感じたり、もう少し時間をかけて自分のことを探求したいと感じたりした場合は、継続面接に移行します。回数を重ねていくと徐々に自身の課題が明確になり、自分の力だけでやってみようという自信がつき、2回~10回程度で終結を選ぶという方が多いです。
20回、30回と継続される方は、「カウンセリングに行く」という行為が生活の中でパターン化され、心身の健康を維持するためのライフスタイルになっている方が多い印象です。中には数年継続されている方もいます。
継続は必須ではありませんし、長く続ければ良いというわけでもありません。どこをゴールとして設定するのかは担当者と話し合って決めます。

 

7. 主訴

グラフは申し込みの段階でご本人が「現在困っていること」として訴える相談内容です。しかし、お話を聞いてみると、どれか一つだけということはほとんどなく、多くの場合は複数の事柄が関連しています。カウンセリングが進展するにつれて自身の新たな課題に気づくということも多々あります。
当ルームは「自分のあり方を見つめ直すこと」を基本的な概念としています。そのためか「自分の課題が何なのか知りたい」と来談される方が多い印象です。よくある相談内容は「自分に自信がなく意見を言えない」「感情のコントロールができず家族や同僚に当たってしまう」「他人に共感しすぎてしまう」といったようなものです。そして詳しくお話を聞いていくと、生育歴の中で未解決の葛藤があり、それによって現在の人間関係や心身の健康に不具合が生じているというパターンがほとんどです。
人間関係の悩みは一貫して多く、この傾向は今後も変わらないでしょう。人間関係について何の悩みもないという人はほとんどいないと思います。自分にとって重要な相手との関係に悩むこと自体に自分の課題を見つめ直すヒントがあるとも言えるでしょう。